改正生活保護法の問題点を学ぶ しばし積読だった『月刊 生活と健康』2020年1月15日1月号の生活保護問題対策全国会議・田川 英信事務局次長の論考は必読だったし、多くのひとに読んでほしい

「全国生活と健康を守る会」の月刊誌(1月号)が届いていたのですが「積読」でした。
雑誌整理のために、たまたま手に取って、表紙を見ると「改正生活保護法の何が問題なのか」という論考に目がいき、そのまま読み始めました。

元ケースワーカー・田川さんの問題提起を知ってほしい

執筆者は田川英信さんでした。
田川さんは、元東京都世田谷区の職員で、ケースワーカー・保護係長を15年以上経験したという経歴の方で、何度か講演を聞く機会がありまして、どの講演もとても勉強になる話でした。
現場を知る・体験をしてきた方の話というのはとても重要だと、今の活動をするようになってさらに強く認識するようになりましたが、本当に残念な事に、現場を知る・体験をしてきた方の問題意識・問題提起について、継続して「メディア」が取り扱わないことに、もどかしさを感じます。

話が横道に逸れるやつーメディアの影響力

最近、『フィクションが現実となるとき 日常生活にひそむメディアの影響と心理』カレン・E・ディル−シャックルフォード著、を読んでいるのですが、あらためて、日常の、生活の一部となっているテレビ・新聞・映画・本・SNSなどといった「メディア」、特に大手広告主が背景にあるメディアの影響がいかにして、例えば人権感覚を狂わせていくのか、そして自覚のないままにそのような情報を摂取し、どのように影響が現れる(即効か遅効)のかなど、メディア心理学、社会心理学での研究・実験の結果から、明らかにしていきます。

「暴力は暴力を生み出す」

本書では、メディア暴力の専門家が集められ、一致した見解について「メディアで描かれる暴力は攻撃性をますかというこの科学的な議論は、基本的には終わっている」と紹介し、著者は専門家の研究結果・成果に繰り返し重要なメッセージが含まれているといい、「暴力は暴力を生み出す」ということを強調します。

「メディアは影響力のある講師」

近年、「ヘイトスピーチ」に類する発言・発信も表現の、言論の自由であるという主張があります。本書では、こうした問題についても言及しています。ネガティブな情報が共感を鈍らせる影響があることも指摘しています。メディアがどのように、あることがらの社会的理解を偏らせたりするのか。こうしたメディアのデメリットを制御していくことの必要性を指摘しますが、メディアのメリット、可能性についても言及しています。「メディアは影響力のある講師」という話題はなるほどでした。

大手メディアが大切なことを継続的に発信できないのであれば、あるいみ誰もが「メディア」が扱えるようになった時代だからこそ、SNSの重要性は増し、可能性を広げる「メディア」の活用が重要だと本書を読んで実感。
◇話が横道に逸れるやつ、おわり◇

田川さんの論考「改正生活保護法の何が問題なのか」-2度にわたる改正のポイント

いまボクはその勉強したことを現実に活かしていく立場となり、あのときの勉強がとても力になってくれています。とても力になる講演を聞く機会があって、本当に良かったと思います。

話は論考に戻りますが、今回の論考を読んでいまして、あらためて生活保護の権利・生存権が崩壊する法改正が行われてきたことがとてもよく分かります。なので、多くのひとに読んでほしいとも思いました。

論考では、2度にわたる生活保護法「改正」のポイントをわかりやすく説明し、その問題点を明らかにしています。詳しくは、『月刊 生活と健康』の1月を。もしかしたら、田川さんのFBで論考がアップされているかもしれません。かもしれません。

【ちょっと論考の「改正」のポイントを紹介】
①申請のハードルを上げた 申請は申請書と一緒に → 【影響は?】厚労省に多くの批判、異論が出され、提出すべき必要書類が不明に。しかし悪いものが法文にのこる。
②親族の扶養義務の「強化」を狙った →【影響は?】厳密には、「強化」されていないが、危険含み
③不正受給の厳罰化 → 【影響は?】実務に大きな影響を及ぼしている
④医療費の「適正化」→ 【影響は?】原則化への過剰反応が出ている
⑤進学準備金の導入 → 【影響は?】子どもの貧困対策として一歩前進、総体として保護基準を引き下げたことから、家計の苦しさは増している(多人数世帯には保護基準そのものが大幅減額となった世帯が多い)

論考の生活保護法「改正」のポイントとともに「改正」による影響および今後の懸念についても触れられています。

たしかに、実際の申請の場で①や②を強調されて、さらに③の厳罰化が強調されるようなことがあったとしたら、心理的に萎縮することもあるだろうし、申請を断念する相談者も現れるのではないかと危惧するところです。現場でそうならないことを願いたいですが、「水際作戦」が実際に起こっていることを考えると、不適切な対応を助長させかねない改正法の性質上、そうならないための情報を宣伝や、日常の活動の中で伝えていくこと、また議会でチェックすることが大切だと思いました。

Facebookでの田川さんとのやりとり

武下  FBとかに、この論考ではない、でも近い論考を投稿をしたりしませんか?
著作権上、雑誌の内容をTwitterにあげることはできないので、もし、FBで投稿されるようであれば、それをTwitterに、もしくはブログで、アップできればとおもっているのですが。

田川 武下さん、内容まではアップしてません。
保険医団体連合会の雑誌が初出です。保団連によると、執筆者に著作権があるとかで、他に出しても構わないとお聞きはしました。